アオアシのサッカー用語解説!【前編】ゲーゲンプレスとは何ぞ?

FOOTBALL

5レーンについて説明してほしいと依頼がありました。ありがとうございます。

5レーン理論だけでなく、漫画「アオアシ」でたびたび登場するサッカーの用語たちについて説明していこうと思います!

が、私はあまのじゃくなので、まずは別の専門用語から説明することにしました。その名も「ゲーゲンプレス」。最近よく聞く言葉です。

読む人の知識にも依存して、読みやすさが異なってくると思うので、各見出しにわかりやすさの目安を置いておきました。難しくても重要なところは★にしています。

参考指標として、次のような指標を設けました。

  • 【A】…初心者でもわかる、というレベル。読んでほしい。
  • 【B】…ちょっと難しくなってきた。できれば読んでほしい。
  • 【C】…ちょっとマニアックになってきた。興味があれば読んでほしい。
  • 【★】…重要だから、難易度にかかわらず読んでほしい。

一応、基本的な歴史や内容はココでも説明しているので、参考にどうぞ。

近年、サッカー漫画のバリエーションが広がっている!【A】

サッカー漫画は今までもいろいろありましたが、主人公の多くはいわゆる「攻撃的」なポジションの選手たちです。

最近人気のあるDAYS、本田圭佑も監修したファンタジスタ(ステラ)、そしてサッカーアンガの先駆者キャプテン翼。すべて主人公はトップないしはトップ下です。

しかし、近年では、そんなサッカー漫画界の王道からちょっと外れた漫画が増えてきています。しかもどれも面白い。

その中でも、普通の漫画と着眼点が違うという意味で特に面白い漫画を4つさらっと紹介します。

その面白い4傑とは、おススメ順に、①アオアシ、②さよなら私のクラマー、③GIANT KILLING、④フットボールネーションです。

まずは、今回のメインであるアオアシ以外の三作品をざっと紹介しましょう。

さよなら私のクラマー

日本サッカーの父」 デットマール・クラマー氏 写真特集:時事ドットコム
「日本サッカーの父」と呼ばれるドイツ人指導者クラマー(中央)

前作である「さよならフットボール」で、男子の中に混じってサッカーをする女子を描いていたのですが、踏襲して、高校の女子サッカーについて描いています。

実際に女子サッカーを取材した作者だからこそ、女子サッカーのシビアな一面まで細かく描写されており、物語が深く面白くなっています。

ちなみに、クラマーは、日本サッカー史上、初めての外国人コーチでであり、日本サッカーに尽力したことから、日本サッカーの父と呼ばれています。

ジャイアントキリング

スペイン警察、デポルティボウルトラスの16名を逮捕 | ゲキサカ
ウルトラスは、旗や太鼓などを用いた大々的な応援でも目につきますね。

弱小クラブであるイースト・トーキョー・ユナイテッド(ETU)の監督に就任した達海監督がクラブチームを立て直していくドラマを描いています。

現実でも浦和レッズのウルトラス(特に熱狂的なファンで、ゴール裏に陣取っている。時にはフーリガン化することもあり、問題視される)の問題がありましたが、

達海監督とサポーターの関係なども描かれており、達海監督が主人公的ポジションなのですが、ETUという1クラブの視点で描かれているような構成となっています。

また、選手の中でも新人の椿という選手にもピックアップされており、様々な見方で楽しむことができるのが特徴です。

フットボールネーション

いわゆる「スポーツ学」的にサッカーを分析した漫画です。

スポーツ選手のパフォーマンスを支える体の作り方と筋肉が体に与える影響などの視点から試合を分析していくという漫画です。

そのため、試合展開自体が重要なわけではなく、どちらかというと試合にまで至る準備段階の方に腫大が置かれています。

作者の絵のタッチが静止画的であることもあり、動きがないといわれることも多いですが、そういう漫画だと割りきれば、非常に面白いです。

漫画アオアシは、サッカー選手も絶賛している!

サッカー漫画『アオアシ』&専門誌『footballista』コラボ増刊号発売 ...

あの内田篤人も絶賛!

フォワードではなく、「サイドバック」をフィーチャーした漫画です。

賢く、ピッチを俯瞰できるサイドバックになるという意味では、

日本ではもしやすると内田選手が最も近かったのかも。

また、サブテーマとして「日本の育成年代」ということがあり、

戦術面・精神面・ユースと高校のあり方などいろいろ詰め込まれています。

なぜ、ここ最近で難しい専門用語が増えつつあるのか?【C】

1930年代のオーストリアのフォーメーション。2バック!

サッカーに関して、今まで様々な革新的な発明が行われてきました。

1930年代はオーストリア(=ヴンダーチーム)が、1950年代は、ハンガリー(マジックマジャール)が世界を席巻していたのですが、

その時代のフォーメーションはWMシステム(図参照:まさにWとMで成立しています)などが一般的で、現在では考えられなかったほどで、攻撃偏重でした。

そこから、1960~70年代までのイングランドでは(マン・ユナイテッドやリヴァプールの一時代を除き、)ロングボールを放り込んでなんとかするという古典的な「キック&ラッシュ」が一般的でした。

このように攻守分断」が当たり前だった時代が50年前まで続いていました。

ここから、40年あまりで「全員攻撃・守備(トータルフットボール)」が発明され、マンマークだけではなく、ゾーンディフェンスも発明され、プレスも進化していきました。

この40年で果たした戦術の革命と比べると、超革新的な戦術の進化・発見というのはここ10年で起きていないといえます。

にもかかわらず、戦術に関する用語は増え続けています。なぜでしょうか。

それは、戦術の細部についての「言語化・体系化」が進んできたからです。

大まかな戦術のモデルはもう出尽くしてしまったといってもよいので、これからは「ゲームとは何か解釈する」ことでゲームの細部を定義する段階に来たのです。

例えば、ヨーロッパのトップクラブの一つであるリヴァプールでは、監督であるユルゲン・クロップの要望により、スタッフに数学者や物理学者を入閣させています。

ゲーゲンプレスについてはともかく、5レーン理論は新しい考え方ではないのですが、ここ10年で初めて「体系化・言語化」された考え方であるといえます。

DAYSのも登場!「ゲーゲンプレス」って何?

最近復帰を果たした日向坂46の影山さんのキャッチフレーズは「あなたの心にゲーゲンプレス」なんだそう。

ゲーゲンプレスの本来の意味からすると、ちょっと使い方がビミョーな気もするけど、影山さん好きなので良しとします!

影山さんの魅力の一部をこちらの記事で解説しているので、どうぞ!

まず、ゲーゲンプレスとは何ぞや?【A★】

ゲーゲンプレス( “Gegen-pressing” )は、ドイツ語で直訳すると「カウンターに対して」という意味になります。なんのこっちゃ。

英語にするとわかる人はわかるようになります。英語ではカウンタープレス( “Counter-pressing”)といいます。日本でゲーゲンプレスのことをカウンタープレスということもあります。

つまり、ゲーゲンプレスとは、相手のカウンターに対してプレスをかけること。語弊を恐れずに言うと、「カウンターのカウンター」となります。

今のサッカーのフェーズは攻・守の二つではない!?【A~B★】

別の記事で、サッカーはシームレス化してきていると書きました。攻守の概念があやふやになってきているんですね。

今では、「トランジション」というものが、重要にとらえられるようになってきています。トランジションとは、攻守の切り替えのことを言います。

トランジションの中でも、守→攻はポジティブトランジション(ポジトラ)、攻→守をネガティブトランジション(ネガトラ)といいます。

さらに言ってしまえば、攻めている時と、2種類のトランジション時、守っている時のフォーメーションは違うのです!

<図解:トランジションとゲーゲンプレス>【B★】

例えば、攻→守の切り替えを見てみましょう

一枚目の画像では、赤チームが攻めていて、黄色の矢印のような縦パスを入れようとしている場面であるとします

しかし、2枚目の画像のように、相手DFがプレッシャーしてきて、3枚目の画像のようにボールを奪われたとします。赤チームにとってはこれが「ネガティブトランジション」の状態です。

このような自分のゴールが近い(=深い位置といいます)位置でボールを奪っても、相手のプレスを交わすのはなかなか難しいです。

オレンジ矢印のような動きをして、青はボールを引き出そうと、赤はボールを奪おうとプレスをします。(これが3枚目の状況です)

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-10-1024x449.png

3枚目から「トランジション」の戦いが始まります。特に、赤チームの選手の矢印に注目してください。

相手のパスコースを切りながら、ボール近くの*6人ほどがボールに近寄ってボールホルダーにプレスしています。(=カバーシャドウといいます)

この6人によってボール周辺のプレーエリアが圧縮され、強度の高いプレスが生まれます。(6角形はさらに小さくなっていきます)

ネガティブトランジション時に発動するこの高強度プレスのことを「ゲーゲンプレス」ないしは「カウンタープレス」というのです。

*6人というのは決まっていません。この場合はというだけですが、6角形を形成してプレスに臨むことが多いです

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-11.png

ネガティブトランジションでない状況での相手への高強度なプレスは単に「ハイプレス」といわれます。

Chelsea vs Liverpool Tactical Analysis: Chelsea should learn ...

上の写真の状況は、青(チェルシー)がボールをコントロールしており、そこにプレスをかける形なので、単なるハイプレスです。

ボール中継のかなめであるジョルジーニョ(写真中央)へのパスコースを切りながらも、トランジションを念頭に置いた6角形が形成されています。

BvB TACTIC under Tuchel. Part 2: Counter-pressing \ Gegenpressing ...

ボールが所定の位置に入るとすぐにミツバチがスズメバチを駆除するように一斉にボールホルダーにプレスがかかります。

上の写真は、ゲーゲンプレスで見られる形をしていますが、ネガティブトランジション時でなければゲーゲンプレスとは言い切れません。

ゲーゲンプレスをするメリット・デメリット【B★】

サッカーにおける優位性というのは、大きく3つにわけるとされてきました。

  • 数位的優位(数が多い方が強い)
  • 位置的優位(相手2人の中間に陣取るなどの位置取り)
  • 質的優位(選手のクオリティが高い方が強い)

特に、最近流行の「ポジショナルプレ―」(5レーン理論もここに含まれます)は、この優位性を作り出すことを体系化したものだと考えてよいでしょう。

対して、ゲーゲンプレスは、もう一つの優位性を相手から奪うことを特徴としています。その優位性は何かというと、

時間的優位」と呼ばれる優位性です。

時間的優位とは、判断決定に至るまでの時間ととらえることができます。

ゲーゲンプレスにおいては、まとめて相手にとびかかっていくことで、局面的に数滴数位を作ると同時に、プレッシャーによって相手の思考時間を減らすことができる、ということです。

ここで、そのことによって得られるメリット・デメリットを見ていきましょう

・高い位置でボールを奪くことができるので、奪ってからゴールまでが近い

・相手もカウンターしようと攻め姿勢になっていることから、攻めるスペースができていることが多い

・相手に十分な思考時間を与えないので、ミスを誘うことができる

・練度が高ければ、ほぼ常に相手陣地内で攻めることが可能

★繰り返すことで波状攻撃が可能になる

・プレスをはがされると、数的不利になり、逆にピンチを招く

・ディフェンスラインを高く保つことが重要で、CBが優秀でないと厳しい

・相手のアジリティについていくフィジカルや運動量が要求されることがある

・全体の協調が大事で、練度が要求される

バルセロナも「ゲーゲンプレス」を使っている!?【B】

クロップ政権下のドルトムントやリヴァプール、ライプツィヒなどのカウンターに特徴があるチームが用いる印象のあるゲーゲンプレスですが、ポゼッション型のチームの方がより重要といえるかもしれません。

ポゼッション型のグアルディオラのバルセロナやマン・シティは、支配率を高く保つことを前提に設計されています。

そこで、一回ボールを失ってすぐに奪い返すことを繰り返せば、支配率はずっと高いままですし、弱点となるディフェンス面を隠すことができます。

黄金期のバルサが強豪相手にも70%付近の高い支配率を保っていたのは、このゲーゲンプレスを行って攻撃権を即時回復していたからなのです。

攻撃の「主軸」としてゲーゲンプレスを用いるということ【B】

対して、かつてのドルトムントのようなチームはゲーゲンプレスを攻撃の主軸とし用いていました。守備方法なのに攻撃とはどういうことなのでしょう?

ポイントは「あえて」ボールを手放すということ。正確にはボールを手放すことを厭わないというところでしょうか。

先ほども見せたような図、というか状況は同じなのですが、これが「攻撃の主軸」としてのゲーゲンプレスであるといえます。

深い位置へ50-50の(浮き球などの)ボールを放り込み、取れたらそのままシュート、取れなかったら即座に猛烈なプレスがかけられます。

「混戦状態(カオス)」を無理やり作り出し、それをコントロールしようという発想です。カオスをコントロールするために、あらかじめネガティブトランジションのことを考えたポジション取りをしています。

このポジショニング・プレースタイルのことをサイモン・クーパーは「嵐のようだ」ということで、ストーミングと提唱しましたが、

ポゼッションスタイルのグアルディオラのバルサやマン・シティもネガティブトランジションのことは考えられており、

ポジショナルプレーと対立的な文脈の中で考えるのは私は否定的な考えです。

ESPNの原典がなくなっていたので、footballistaの記事をどうぞ。

新概念「ストーミング」考察:ボールを手放すことを厭わない概念 | footballista | フットボリスタ
「ポジショナルプレーとストーミングは本当に対立するサッカースタイルなのか、慎重に検証しなければならない」という結城康平氏に、新概念ストーミングについて考察してもらった。両者の差異から浮かび上がる、モダンサッカーのマトリックスとは――? 『フィナンシャル・タイムズ』紙のコラムニストとして活躍する英国人サイモン・クーパーは...

その代わり、FWは基準点になれるのが好ましいです。ドルトムントではレヴァンドフスキ、リヴァプールではフィルミーノ、ザルツブルグではハーランドなどなど。

ただし、最初からゲーゲンプレスを警戒されると「相手にボールを持たせればいいんだ」となって、ボールを持たされます。その時の手がない場合には手詰まりに。

そのため、近年では、ポゼッションスタイルとこのゲーゲンプレスを組み合わせたハイブリッドなチームが増えてきています。

現代のゲーゲンプレスは3種類に分けられる!【C】

ゲーゲンプレスと一括りにいっても、プレスのかけ方は複数あります。プレスのタイプによって要求される能力が異なってきます。それぞれを見ていきましょう。

パスの受け手を制圧するタイプ

ハインケス・グアルディオラ政権下でのバイエルンなどが用いていたタイプ。周りの選手にマンマークでつくことで1対1で有利な状況を作り出します。

そのため、1対1のスタッツがこの3つの中ではダントツでいいです。その代わり、インターセプト率は下がってしまいます。

ボールホルダーへプレスに行くのが1人ないしは0人なため、他のタイプに比べて選手の密集・インテンシティは高くならないですが、

プレスをうまくかわされたとしても比較的余裕をもって対処することができるタイプであるともいえるでしょう。

POINT

・交わされても最も安定しているカウンタープレスである

1対1をベースとしており、インターセプト率が低い

・その分、この中では一番インテンシティは低く、取り切れないことも多い

プレーエリアを制限するタイプ

考えられられるすべてのパスコースを切りながら、極端に選手が密集していくタイプ。全方向でなくても、1つ穴をあけておくことで、わざと誘導させることもあります。

トランジションの際に近辺のスペースをケアするために人数をかけるため、運動量が必要とある程度の機動力・フィジカルが必要となります。

また、スペースを埋めつつ、背後のパスコースを切りながら相手に近づいていくので、カバーシャドウのスキルが重要になります。

もし、このゲーゲンプレスをかいくぐられると、敵に広大なプレーエリアを与えることにもなるので、対応が難しくなります。

ただし、他の肩と違って、ボールホルダーにかかる圧力はダントツで1番なので、敵の時間的優位をもっとも奪う型で。相手のミスを誘発させることができます。

攻撃として用いられるのはこのタイプであることが多いのではないでしょうか。クロップの指揮するチームのカウンタープレスは大体この形です。

3つの中では、最も練度と強度を必要とするので、なかなか難しいですが…

POINT

・最もフィジカル・運動量を要求し、インテンシティが一番高い

時間的優位を極端に奪うので、相手のミスを誘いやすい・奪取率が高い

・交わされた場合は相手にスペースを与えるので、即ピンチになる

・最も練度を必要とするため、なかなか実行が難しい

パスコースを制限するタイプ

世界に衝撃を与えたバルセロナのプレッシングがこれです。

全員がカバーシャドウを意識しながら、何人かがボールにアプローチしていきます。シャビやイニエスタはお世辞にもフィジカルが強いわけではなかったので、

このようなタイプのプレスにたどり着いたのではないかと思います。

→この3つのタイプの中では、インターセプト率が最も高くなります。その代わり1対1の勝負になると分が悪いです。

バルセロナの歴史は、オランダのトータルフットボールから始まっています1970年付近で、ヨハン・クライフとリヌス・ミケルスで作り上げたこの全員攻撃・全員守備の戦術では、

今の時代のようにプレスが整備し愛れていなかったので、ボールホルダーに全員が向かうという戦術でしたが、このように進化しているのを見ると感慨深いですね。

Total Football, Johan Cruyff & The Dutch Team of the 1970s
POINT

・フィジカル面での要求は少ないが、サッカーIQや相手の認知を求められる

・1対1ではなく、インターセプトをベースとしたプレッシングである

・1対1の勝負になると、フィジカル面などで分が悪くなる

ゲーゲンプレスとは、ただのハイプレスのことではない。

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ゲーゲンプレスという言葉を、ただハイプレスのように用いるのは誤用なので、気をつけるようにしましょう。

アオアシでは、市立船橋が、長身ストライカーのトリポネを基準としたカウンターアタックを見せていました。

その描写の際に「リヴァプールのようだ」「トリポネ・二原はマネ・サラー・フィルミーノのようだ」と合ったので。ゲーゲンプレスについて書いてみました。

フィルミーノみたいな選手はいなかった気もするけどね…

また、日向坂46の影山さんのキャッチフレーズが「あなたのハートにゲーゲンプレス」なんですよね。

これ、ファンの方の応募なのかな?ハイプレスと誤用していると思います。ゲーゲンプレスだと一回心が遠のいちゃってるんで、いろいろ複雑(笑)

戦術分析の本で言えば、この本が面白いので、気になったら一冊いかがでしょうか。

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